心身症と心因性視覚障害
現代のように多くのストレスを感じる社会では、ストレスによる心理的な影響を受けることがあります。
心身症とは、日常生活における心理的あるいは社会的ストレスが原因で、身体のどこかに症状が出てくる病気です。ストレス性胃潰瘍や心臓神経症などがあります。
ストレスにより目に症状がでるのが目の心身症で、眼心身症とよばれています。目や脳に異常がないのに、いろいろな目の症状がでます。その一つが心因性視覚障害で、その中でいちばん多いのが視力障害です。
目に悪いところがないので、メガネやコンタクトレンズを使用しても、視力は良くなりません。
脳にストレスがかかり、目に見えているはずのものが認識できないのが、心因性の視力障害です。
心因性視力障害では失明することはありません。この病気をよく理解し、正しく対応することが大切です。
心因性視覚障害の原因
ストレスの原因が判明するのは約60%で、なんらかのストレスが目の症状に変換され、視力低下として現れると考えられています。
家庭や学校における悩みが思春期の心理的に不安定な子供のストレスとなり、視力低下を引き起こすと考えられています。
しかし、最近では些細な事が原因となることもあり、本人でさえ気づかないことがあります。
・家庭環境における原因
親の愛情不足・過多、兄弟関係、肉親の死・離別、両親の不仲・離婚、塾・習い事・進路への不満・負担などがあります。
・学校関連における原因
いじめ、友達や担任教師への不信・不満、入学・進学・転校、席替え・クラス替え、勉強やクラブ活動への 不安・不満・負担などがあります。
・その他
友達や尊敬する先生や両親がメガネをかけていることへの憧れによるメガネ願望、遅刻をした、宿題を忘れた、怪我をしたなど普通では心因とは思えないようなことが原因となることがあります。
心因性視覚障害の治療
ストレスの原因を見つけ、徐々にそれを取り除くことが大切です。焦らないようにしましょう。
子供との信頼関係が最も重要です。保護者、眼科医、担任教師の理解・受容が大切であり、眼科医―家庭―学校の連携が必要です。
子供の安心と願望を満たすために暗示的治療として、度のないメガネを一時的に装用させたり、毎晩親が抱っこして目薬をさしたりすることがあります。
原因が不明でも、焦りは禁物です。眼科的には異常がないので、良くなりますから過度の心配はいりません。
聴力障害などの他の心身症の合併や、長期化するようであれば、耳鼻科医、小児心療内科医、小児精神科医などの治療も必要となることもあります。治療にあたり、とにかく医師を信頼してください。
心因性視覚障害の予後
心因性視覚障害で失明することはありません。多くは症状が発見されて1年以内に視力は次第に改善されます。
しかしまれに心因が複雑なものが年齢とともに多くなり、改善までに長期間を要したり、再発を繰り返したりすることがあります。